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継承と変奏

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先日、東京出張の折、1時間半ほど時間があったので上野で途中下車、駆け足で東京国立博物館の「大琳派展 ~継承と変奏~」を観てきた。俺が入ったのは朝の開場直後だったが、平日なのに昼前には入場制限がされていて、その人気の高さにとても驚いた。この「琳派」の流れは一種独特である。本阿弥光悦、俵屋宗達の作風、画風を、その約100年後に尾形光琳、乾山が「私淑」(「孟子」離婁下の「子は私(ひそ)かにこれを人よりうけて淑(よし)とするなり」から・・・直接に教えは受けないが、ひそかにその人を師と考えて尊敬し、模範として学ぶこと)という形で受け継ぎ、変化を加えて一つの世界「光琳風」というものを確立。そして、そのまた100年後くらいに酒井抱一、鈴木其一といった芸術家が光琳を私淑して画風を受け継ぐのである。狩野派などのように世襲によらず、その世代間に師弟関係といったものが全く無いのにもかかわらず画風が受け継がれ、一つの芸術の形として完成するという文化継承の不思議にはとても感銘した。
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特に注目が集まっていたのは、「風神雷神図屏風」のように俵屋宗達が描いた題材を尾形光琳が真似、そしてそれを酒井、鈴木がまた模して変化を加えた作品群。これらが、その変化を比較しやすく連続して展示してあり、同じ題材の中に作家ごとの特徴を探し出すのは楽しい作業であった。それと、俺が特に目を奪われたのは、本阿弥光悦の工芸品である。すばらしいデザインの硯箱、笛筒など、当時の蒔絵の技術を存分に駆使した作品は、日本の美の極致と言っても過言ではない。
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話は少し変わるが、ここのところ当社の経営にも世界同時不況の余波による影響が見え始め、先行きの不透明感は増すばかりである。これまで、諸先輩方が幾度となく苦難を乗り越え継承してきたこの会社を、我々の世代がなんとしても更に成長させて、後世に引き継がねばならない。そのためにも、琳派同様、先人の残してきた経営の仕組みに更に磨きをかけるとともに、新たなものを付け加えて、更に強い会社へと変えていかねばならないのだ。我々の経営にもまさに「継承と変奏」が求めらている。
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芸術と会社経営を比較するべきではないかもしれないが、あえて共通点を見つけるとすれば、それは両方とも、人の心に何らかの影響を与え、その奥底に眠るエネルギーを沸き立たせる術であるという点だ。会社は一見堅牢な壁にまもられているビルディングがごとく見えるが、実の中身は強くも脆くもなる感情主導の動物、人間の集まりである。登記簿という紙っきれの下に集まった人間たちが、会社の脳となり、手足となってある方向に動いているだけなのだ。俺はこの難局にあたり、人に感動を与え共感を得ることで、そのエネルギーを上手く活かしきることが、今後も変わらぬ唯一の危機の脱し方ではないかと思う。そのためにも、早くその術をマスターし、自分の経営の「型」というものを創り上げたい。
以上、長野戦線異常無し。
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by kaiseik | 2008-11-02 06:34 | アート | Trackback | Comments(0)

北海道戦線異状無し・・・メーデーメーデーっ


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